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    【真夜中のピアニスト】(2005年)

    ロマン・デュリスのフィルムノワール

    ◆真夜中のピアニスト(De Battre Mon Coeur S'est Arrete)2005年
    監督:ジャック・オーディアール
    不動産の裏ブローカーとして暴力や裏切りの世界に生きる28歳のトマ(ロマン・デュリス)。母のようなピアニストになりたいという夢を諦め切れずにいた彼は、ある日昔の恩師に再会したことにより、再び鍵盤に向う決意を固める。フランス語の話せない中国出身の女性ピアニストのサポートを受け、過酷な裏家業のかたわらオーディションを目指してピアノの練習に励むが・・・

    1978年のハーヴェイ・カイテル主演「マッド・フィンガーズ」を現代のパリに移してのリメイク作品だそうです。私はカイテル版は未見です。


    ネズミを放したり電気を止めたりして住民を追い出すといった悪徳な仕事をこなし、暴力的なことも日常的に行ってきたトマが、その血の滲むボロボロの手でピアノに取り組み至福の時を過ごす。そのワイルドさと繊細さ、暴力と芸術の二面性が見所となっていると思います。そして彼の成長もテーマとなっているようです。

    「ルパン」のような格闘とは違う、"暴力"を振るうロマン・デュリス。私は「スパニッシュ・アパートメント」での学生という軽ーい感じのデュリスから入ったので、暴力には随分違和感を感じて女性を口説こうとするシーンの方が違和感なく観れてしまうという、明らかに間違ってる偏った見方になってしまいそうなのを頑張って修正しながらの鑑賞でした。

    お互いに口は悪いながらも父を想う息子としてのトマがとてもいいですね。多少ワガママな父だけど放っておけなくて世話を焼く息子。それだけでただのワルじゃないことが判ります。そして亡き母の影響であるピアノ、母の思い出と自分の夢。汚い仕事に手を染めている自分を忘れるかのように真夜中、自室での練習に打ち込む。しかし決して汚れた現実も無くなることはなく、彼の中に混在しているわけで・・。複雑だけど、それがリアリティなのかもしれないですね。


    中国人ピアノ講師とのシーンも良かったです。指導、アドバイスが中国語とほんの少しの英語で行われ、中国語部分に字幕が入らないため観ている私たちもトマと同じ感覚を味わうわけですが、本当に成り立つのかなと不思議に思いながらも、レッスンの回を重ねるごとにトマがだんだん見せるようになる楽しげな表情や「楽しくなってきた」という発言もあり、彼がピアノにのめり込んで行く様がどんどん伝わってくるのが気持ちいい。デュリスの極上の微笑みもバッチリ拝めますし。

    1978年版とそっくりに撮影されたというオーディションのシーンが、デュリスのお気に入りだそうです。彼自身もカイテルの演技を参考にしたそうで、機会があったら見比べてみたいなと思いました。romain











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