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- 2023.12.07 Thursday
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奇妙な世界が面白い ◆華氏451(Fahrenheit451)1966年 監督:フランソワ・トリュフォー 原作:レイ・ブラッドベリ
SFが嫌いなトリュフォー監督による SF作品です。ロボットが出て来るような話は大嫌いだそうで、未来の社会を描いていますがそういった"いかにも"なものは出てきません。登場人物にあまり人間味やリアリティが無く書物に焦点が当たっている奇妙な物語だし、異常な社会を描いているという意味でSFなんだそうです。 オープニングクレジットから風変わりです。タイトル、キャスト、スタッフなど、普通は文字が画面に出るものがナレーションで読み上げられます。なので、文字は全く使用されないという「華氏451」の世界にいきなり入ってるわけですね。 本を発見しては焼却していくファイアーマンたち、家で一日中ぼーっとテレビを観ている主人公の妻、そのテレビの中の機械的に話す人など、やたら表情の乏しい不気味な登場人物たちが印象的です。本を読まなくなった人々は、情報がテレビからの限られたものに統一されて、誰もが同じ思想を持ったような形になってるわけです。管理社会・・・恐いですよ。考えるようなこともなくなって、ぼけっとした人ばかりになってる様子だし。 そんな中で隠れて本を読んでいるクラリスは、溌剌としゃべり知識も豊富、キュートな笑顔も見せちゃうまるで別世界の生き物。そりゃーもう魅力的に映ります。このクラリスを演じたジュリー・クリスティは、家で薬漬けでボーっとしてるモンターグの妻の役も演じています。それが凄いんですよ。同じ人が演じていると一見気付かないくらい全然違うの。(実際私は一度めの鑑賞では同じ顔だと気付かなかった・・・) 髪型は違うけど特に大きく違ったメイクをしているわけでもないんだけど、表情の違いと雰囲気でこれだけ違う人物になっちゃうんだからビックリです。役者って凄いなー モンターグが初めて本を読むシーンも良かったです。表紙から1ページずつ丁寧にめくり、一語一語指で辿りながらたどたどしく小さな声に出して読んでいく。それはもう壊れ易いものに触れるかのように大切に大切に読むんです。文字を読むということに慣れていないからたどたどしいということもあるかもしれないけど、何も読み逃したくなくて一生懸命というようにも見えるし、読みながらの歓びの表情がとても良くて・・・。この上ない快感といった感じ。本が読みたくなりますね。トリュフォーの本への愛情、しっかりと伝わって来ちゃいました。 この映画は、英語が全くできない監督が英語のセリフの英語圏作品として、英語しか話せないスタッフ、キャストに囲まれて作らなければならなかったことや、主演のオスカー・ウェルナーとの不和などトラブル続きだったそうです。そのせいもあるのか冷たい雰囲気のある随分不思議な趣の作品で、それが私にはとても面白いんです。francois |