フィリッパ・グレゴリー原作のTVシリーズが、今年の4月から日本でも配信されていたことに秋に気づいて、慌てて観た!(AppleTVアプリの中のStarzplayというチャンネル、うちではAmazon FireTVを通して視聴。→月額600円、7日間無料体験あり)もう7年も経つから諦めていたのですっごく嬉しい!
【ホワイト・クイーン 白薔薇の女王】
やっと観れた!原作も7年くらい前に読んで楽しんだ覚えがあるけど、ドラマもたぶんそのまんまのイメージですごく良かった!「The White Queen」(これしか読んでない)を中心に「The Red Queen」と「The Kingmaker's Daughter」を混ぜてあるわけかな。全10話。面白くできてると思う。キャストも当時チェックしてリチャード(アナイリン・バーナード)に期待していたけど、やっぱり良かったわ〜。暴君として知られるリチャード3世は実は真偽不明の噂で作られた人物像だとも言われてるそうだけど、この物語内で描かれる彼もわりと反感を感じないキャラなんだよね。むしろアホな兄のジョージとの対比ですごいイイコに思えるくらい。王になった後も彼よりも王妃の方を悪者に描いている感じだし。王座を取ったり取られたりを繰り返す戦時中の話で、権力のある人ほど身近な人間とも信用し合えない状況。それぞれに解るわ〜と思える理由があるから誰が悪いとも言いきれなくて辛い...し、そこも面白い。ただ、原作もそうだったけど、元々のヒロインE.ウッドヴィルをどんどん嫌いになって行く仕様なのが観ていてちょっとね。母親の方はすごく好き。あと、ヘンリー7世の母マーガレットとか、結果は分かっていてもキャラ的には頭のおかしい人にしか見えないけど、あの圧倒的世渡り上手のトマス・スタンリー(良い!)と再婚した後は、夫婦の関係や雰囲気も合わせて最終的にはちょっと面白くなっちゃってた。あ、そういえばこのドラマを観たがった理由はジェイムズ・フレインだったわ。ウォリック伯...やっぱり素敵な役ではないけど、あの顔を見ると安心する(笑)。ウォリックに利用される娘たち、特に妹アンの物語もいいね。幸の薄そうな見た目ながら頭の良さや意思の強さで王妃として活躍しそうなところを、どうもヴィラン化していっちゃうのも興味深い。またこの辺りの登場人物から続く家系図・相関図を調べて辿ったりしてしばらく楽しめそう。
これを観終えて現在「悪王リチャード三世の素顔」という本を読んでる。このドラマで見たリチャードが感じが良くて気になったから。エドワード四世が在任中に書かれた文献からシェイクスピアなどまで15〜16世紀の文献を色々見比べて真実を探る内容で面白い。現在まで残っているリチャード三世の悪いイメージ(やクラレンス公の死刑などその辺りに関する情報)の多くは、やはりシェイクスピア劇を信じる方向で伝わってる感じらしい。一般人はそんなトコだろうと予想してた。で、そのシェイクスピアが元ネタとしたのはチューダー期に王たちへのおべっかで敵を悪く表現する慣例に従って書かれた文献だったとのこと。あの(正直でいることを自分の命よりも重んじた...みたいな印象の)トマス・モアまでがそんなことをしてたらしいから古い文献って何も信じられないんじゃ?って感じになってきた。ヘンリー八世の祖父にあたるエドワード四世は悪く言わず、あくまでリチャード三世を悪者にするという忖度もしているようだし。ま、エドワード四世の存命中に書かれたものには、リチャードは悪く書かないでウッドヴィル一族を悪く言う方向の記述があるようだし、結局は時代や著者の派閥とかによるんでしょうね。完全に中立って見つかるもんだろうか。そういう意味では国外に残っていた外交官の手紙など外国人が書いた物の方が信憑性が高そうな部分もあるっぽい。その辺りを研究するのも面白いところなんでしょうね。とにかくリチャードは、背は低めだけど美男子で思いやりのある良い人だったらしいよ!
【ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語】
全8話。エドワード4世とE.ウッドヴィルの娘エリザベスがヘンリー7世と結婚して...という話ということで、「ホワイト・クイーン」の続編なので同じ登場人物がたくさん出てくるけど、製作がイギリスからアメリカへ移ったからかキャストは基本的に総入替え。セシリー公爵夫人のC.グッドールだけなぜか続投で個人的には嬉しい。娘が嫁いで王妃となってからも、ヨークの生き残り王子を担ぎ上げてひっくり返すぞー!と血気盛んな元王妃E.ウッドヴィルに、ずーっと苛つかされっぱなし。コイツいつまで生きてるんだっけ?と途中で思わず調べちゃったくらい邪魔だったわー。あの人については主役時代から隠居時代まで、結局いいところが見つからないまま終わっちゃったじゃないか。エリザベス・オブ・ヨークとヘンリー7世については、敵同士の政略結婚だったわりに結婚生活は上手くいっていた、との情報を前もって得ていたので、夫婦の心の移り変わりなんかを楽しみに眺めていたけど、ヘンリーのパラノイアに見えてしまうほどの情けないネガティヴ感情がチラホラ見えるのがちょっと...。そういうタイプとは知らなかったので。これは実際に色々企む輩がアチコチに居たわけなので仕方ない。しかし、大きくなってからは現実的な物言いで母に楯突いていたエリザベスの頼もしさが、ヘンリーに対しても発揮されるのがなかなか良い。けれどマーガレット・ポールの心優しさがフィーチャーされていくにつれて徐々にエリザベスが "母エリザベス" っぽく変わっていっちゃうように見えてつらい。それぞれがどうしようもない状況に追い込まれていくから仕方ないのよね...。平和な世を築くために冷酷な判断をする必要もあるって、物語として観る分にはよくある話だけど、こういうのを現実にやっていたわけだからなー...。ま、ドコがホントなのか知らないけど。いくらなんでもコレは明らかにフィクションだよね??って部分もあるし、何が史実なのかはやっぱりちゃんと知りたいかもなー。「君、よくやってくれたね。名前は?」と、次へ続く大物の名前を引き出して期待させる終わりもいいよね。
【スパニッシュ・プリンセス キャサリン・オブ・アラゴン物語】
8話ずつの2シーズン。アーサー王子とキャサリン・オブ・アラゴンの結婚からアン・ブリンの登場まで。(この先が作られるのかどうかは知らない。)キャサリン・オブ・アラゴンといえば、「The Tudors」他これまでこの辺りの時代劇をいくつか見た感じでは、スペインから政略結婚のためにイギリスへ来たものの夫が結婚後間もなく病死してしまったためその弟のヘンリー八世と再婚させられて王妃となるが男児を産めなかったために夫に捨てられたちょっと可哀想なおばさん、って印象が残っているわけだけど、そういえば前半部分の若い頃の話って観たことなかったんだよね。ということで楽しみに観始めたんだけど、こんな素敵なラブストーリーがあったなんて!!と驚く内容。しかしこれって史実との違いが大きすぎて歴史に詳しい人たちからは大批判の嵐が起きてるみたい。やっぱりかー。さすがにキャサリンがイギリスに来た時点ではまだ少年だったヘンリーとあんなロマンチックなエピソードがあるわけないもんねー。ま、歴史を学ぶことはできなくても、よくできた二次創作として私はしっかり楽しめましたよ。ヘンリー7世の母が凶悪なヴィランに描かれているのも、これまで観てきた感じから ここまでの暴走もありえるかも?? とも思えて、話としては面白いし。
さて、元々のお目当てはヘンリー七世を演じたエリオット・カウアン。柔らかい声質で王の役ってどうだろう?と思っていたけど、情けない系キャラな部分もある王なので全然問題なし。「ホワイト・プリンセス」時のヒョロいキャストとは打って変わってデカいマッチョになっちゃってるけど、それはしゃーない。出番は前半8話まで。
マーガレット・ポールはローラ・カーマイケルが熱演。彼女お得意の(?)苦悩や困惑に顔を歪ませる様に安定感を感じる。ローラは「ホワイト・プリンセス」の若い頃の同人物役の女優と顔や雰囲気が似ていて良い。彼女のエピソードが多いなと思ったら今作は、キャサリンの物語「The Constant Princess」の他にマーガレット・ポールの物語「The King's Curse」が元になっているそう。クラレンス公ジョージの娘として生まれた子供として「ホワイト・クイーン」に、ヘンリー七世の王妃となったエリザベス・オブ・ヨークの従姉妹として「ホワイト・プリンセス」に、そして今作にはキャサリン王妃の良き友人として登場し、彼女のドラマチックな生涯が通して観られたことで、この人も気になる存在になってしまった。(「The Tudors」では処刑されるとこまで観たし。)
若いヘンリー八世は、チャラくて天真爛漫風だけど国民のために良い王になることを考えてる実は賢いタイプ、という「The Tudors」で親しんだキャラを踏襲してる感じなので、本当かどうかは知らないけど違和感がなくて心地よかった。ま、後半にはこれまたイメージ通りキャサリンへの冷たい態度や酷い仕打ちを見せてくるのでアレだけど。とはいえ、キャサリン役のシャーロット・ホープもヘンリー役のルアイリ・オコナーも現在30歳らしいけど2人とも若く見えるタイプなため、結婚当初はいいけど話が進んでもいつまでも貫禄が出ないのがやや残念かなー。
「The Tudors」では良い人なイメージもなく早々に処刑されてしまった(第3代)バッキンガム公が最終的に素敵な人キャラになっていたのは意外だった。実際は彼はエドワード四世の王妃エリザベスの妹の息子であり父・祖父を辿ると王家と親戚ではあっても血縁関係ではないみたい。なので「The Tudors」で自分の王位継承権を主張してたのはおかしい気がするため、仲の悪いウルジーに嵌められて証拠もないまま反逆罪に問われたというのが史実なら、「The Tudors」よりもコチラの方がホントっぽい感じがする。知らんけど。でもいい人であってくれるとなんか嬉しいんだよな。
※【追記】改めて「The Tudors」を観直して、バッキンガム公がエドワード二世の直径とのセリフを発見。調べたらちゃんとそうなってた。…ということで、元々は王の愛人の子だったために王位継承権を認められてなかったにもかかわらず、ボーフォート家はしれっとランカスター朝で幅をきかせて、後にまんまとヘンリー七世を王に据えた、という歴史らしいので、どうやらエドワード三世の孫の筋にあたるバッキンガム公(エドワード・スタッフォード)が 俺の方が正当な王だぜ!と主張するのは間違いじゃなさそうだね。結局チューダー朝は、マーガレット・ボーフォートが強烈な思い込みを基に頑張り抜いたおかげなのねぇ。なるほどー
あとは、「The Tudors」ではほとんど描かれてなかったスコットランドへ嫁いだヘンリーの姉メグについて詳しくやってくれたので少し勉強になった。ま、あまり強く思い入れることは無かったのですぐ忘れそうだけど。
それから、キャサリンがスペインから連れてきた一番親しい女官リナは、実在した人物を元にしてるとの記事を発見した。これが信用できる記事かどうかはわからないけど興味深い感じがする。
さて、忘れないうちにStarzplayの契約をはずさないとね。お世話になりました。